こんにちは。144Labの菊地です。
5月17日から20日まで、サンフランシスコ・ベイエリアでMaker Faire Bay Area 2019が開催されました。このうち、Arduinoの共同創業者の1人であるMassimo Banzi氏による講演「State of Arduino」の内容をレポートします。
時間のない方はこちらのビデオをどうぞ。
Maker Faire Bay Area2019 - Arduinoの新製品発表リポート
- IDEは30万DL、多様な開発ボードをカバーする最大勢力へ
- オープンソース・プロジェクトに$50,000を寄付
- Arduino Nanoファミリーの新ラインナップ 4種
- 新サービス:Arduino SIMとArduino IoT Cloud
- STEM(STEAM) に向けた取組み
- FPGAのサポート強化
- One more thing .... 新しいArduino IDE
IDEは30万DL、多様な開発ボードをカバーする最大勢力へ
Arduinoはオープンソース・ハードウェアとしては世界最大のエコシステムになりました。Arduinoブランドの製品群だけではなく、STM32、ESP32、Nordic nRF、Mediatek、Spresenseなど多種多様なボードをサポートし、2018年1年間でオフライン統合開発環境(Java版 IDE)のダウンロード数は30万を超えます。
オープンソース・プロジェクトに$50,000を寄付
この動きを更に加速するため、Arduinoは Head of Open Source and Communitiesを新たに採用し、他のオープンソース・プロジェクトやコミュニティとのコラボレーションを促進、さらなるエコシステムの強化を行っていくとのこと。今年は$50,000の基金を用意、このうち$25,000を5つのオープンソース・プロジェクトに寄付すると発表しました。
寄付先はFree Software Foundation, Linux Foundation, Creative Commons, Processing Foundation, RISC-V Foundationの5つです。残りの$25,000の寄付先は、10月のMaker Faire Romeで発表するとのことです。 個人的にはLinux、RISC-Vは意外でした。
Arduino Nanoファミリーの新ラインナップ 4種
最近ArduinoはMKRシリーズのラインナップを強化していたので、今年もその関連の発表が中心だろうと予想していたのですが、今回の開発ボード関連の新発表は Arduino NANOファミリーの強化でした。
ATMega4809 AVRプロセッサ搭載のArduino Nano Everyは、米国価格税抜 $9.9と従来のNanoに比べて戦略的な価格付けがされています。また、u-Blox社 NINA Wi-Fi/BLEモジュールを搭載したArduino Nano 33 IoT、Arduino初のArm Cortex-M4Fコア搭載 nRF52840を実装したArduino Nano 33 BLEとArduino Nano 33 BLE SENSEも合わせ、Nanoシリーズをぐっと身近にすべく、強化した印象です。
詳細スペックについては、スイッチサイエンスマガジンも合わせてご覧ください。 mag.switch-science.com
新サービス:Arduino SIMとArduino IoT Cloud
これはMKRシリーズ向けの新サービスになるのですが、Arduino MKR GSM 1400などのセルラー搭載開発ボード向けのSIMカードをリリースします。Arm社の提供するSIM管理サービス Pelion Connectivity Manegementを利用し、グローバルローミング対応のSIMカードを発行。最初は米国から、追って欧州向けに提供します。当初はGSMから開始しますが、LTE-M、NB-IoTなどの新しい通信規格にも対応していく模様です。
また、Arduino Nano 33 IoTなどのWi-Fi/セルラー搭載ボード*1向けにArduino IoT Cloudがリリースされました。ブースでは実際のベータ版デモを見ることができたのですが、簡単なセンサーデータの可視化やマップとの連携程度であれば、わざわざサーバを構築しなくてもデモができるレベルまで作り込まれている印象です。
STEM(STEAM) に向けた取組み
昨年の展示から、STEM(STEAM)分野への注力が表明されていたのですが、今年はHigh School向けパッケージArduino CTC Goと、Google Science Journalと共同開発した Arduino Science Kit Physics Lab(Middle School向け科学キット)を1月にリリースしました。
同時にArduino Certification Program(認定プログラム)というArduino検定試験を米国で始めると発表しました。これは、米国版のThe Arduino Starter Kitと連動する形で開始するようです。
FPGAのサポート強化
昨年のMaker Faire Bay Areaで発表されたArduino初のFPGA開発ボード、MKR Vidor 4000。 このIDEの最新バージョンについても紹介されました。ドラッグ&ドロップで複雑なFPGAプロジェクトをシンプルに構築できる、パワフルなIDEとのことです。
One more thing .... 新しいArduino IDE
そして、最後に発表されたのは・・・・・
新しいデスクトップ版IDEを開発中とのことで、Arduino IDE v2.0のプロトタイプを公開しました。
これはフレームワークを一新し、バックグラウンドで走るコマンドライン・インタフェース(CLI)を用意。ダウンロードやコンパイル、アップロードをCLI経由で動かすことができます。一方で、洗練されたユーザ・インタフェースも用意され、フル・ファンクションで機能するデバッガを含めて、初心者からプロフェッショナルまで幅広い層にとって使いやすいものを目指すとのことです。これから数週間でアルファ版がオープンソースとして公開され、以後一般リリースに向けて作業が進んでいくものと思われます。
以上、盛りだくさんの発表でしたが、今後のArduinoの目指す方向性を示唆する講演となったのではないでしょうか。 新しいIDEについては、進展があり次第、ここでも触れていきたいと思います。