モゲナイマイクロのはなし

この記事は自作キーボード #2 Advent Calendar 2018 15日目の記事です。 adventar.org

昨日はtanimotoikkiさんの「初心者がこの一ヶ月で経験したトラブル」でした。

この記事では今年のMaker Faire Tokyo 2018で発売した、Pro micro スイッチサイエンス版 通称モゲナイマイクロについて書きます。

Pro Microの改善点

自作キーボードについて調べ始めて驚いたのは、Pro Micro採用率の高さです。しかしMicroUSBコネクタに力がかかってモゲやすい以外にもPro Microをキーボードに使うにはいくつか改善できる点があることが分かりました。

  • 上記の通り、ケーブルの抜き差し時などにMicroUSBコネクタに力がかかった時にモゲやすい
  • 厚い
  • 5Vと3.3Vの両方に対応するため、5V版には不要な部品が付いている
  • コンスルー(背の低いコンスルー 12ピン)に対応していない

対策

MicroUSBコネクタ

https://docid81hrs3j1.cloudfront.net/medialibrary/2018/09/IMG_6394_500_2mxbPAx.jpg https://docid81hrs3j1.cloudfront.net/medialibrary/2018/09/IMG_6357_500.jpg

モゲ対策と厚み対策のため、MicroUSBコネクタをMolex製の物に置き換えました。横からの写真を見るとわかりますが、基板をくりぬいて配置してあります。そのため基板の厚みだけ高さを抑えられました。また固定用の端子が基板を貫通するタイプのコネクタなので、よりモゲにくくなっています。

また、もっとモゲにくくしたいという方向けにMicroUSBコネクタの左右に小さなビアを開けてあります。 f:id:ohki_s:20181212184032j:plain そのままだとレジストがかかっていてはんだをはじいてしまいますので、カッターナイフの背中などでレジストを削ってからはんだ付けしてください。0.3mm程度のワイヤが使えるはずです。 f:id:ohki_s:20181212184028j:plain

電源周りの部品変更

SparkfunのPro Microでは3.3Vにも対応できるようにLDOという電圧変換ICが使われており、その付帯部品として黄色いタンタルコンデンサ(10uF)×2が搭載されています。自作キーボードはUSBでつないで使うので3.3Vに対応する必要はありませんし、タンタルコンデンサの背が高く基板の高さを引き上げる原因にもなっているのでこの部分の回路を削除することにしました。

ただし、左右に分かれたスプリットタイプのキーボードの中には左右を判定するためにUSBからの電源(VBUS)を利用している物があるので、ここはVCCからVBUSに電流が回り込まないようにダイオードを付けてあります(というか残してあります)。また、3.3Vへの切り替えがなくなったのではんだショート用端子J1は削除しました。

部品点数を減らすことにより、価格を下げることにもつながりました。

ピンヘッダ用の穴の径変更

ピンヘッダ用の端子は直径1.0mmで作ることが多いのですが、コンスルーが対応するのが0.9mmまでなのでそれに合わせてあります。

部品サイズ変更

チップコンデンサの入手が困難になっているというニュースを聞いている方も多いかと思います。1608サイズのコンデンサは特に入手が困難なので、抵抗を含め1005サイズに置き換えました。おかげでMicroUSBコネクタの面積が増えて部品が配置できる場所が減ったことにも対応できました。

モゲナイマイクロの注意点

いろいろ手を入れたのでいくつか互換性がない部分があります。注意点を挙げておきます。

  • MicroUSBコネクタの端が元々のPro Microに比べて1mmほど引っ込んでしまいました
  • 基板に潜るタイプのmicroUSBコネクタなのでケースの開口部の高さを変える必要があります
  • LDOがなくなったので5V(+10%)以上の電圧は入れられなくなりました
  • そのため、RAW端子ではなくVCC端子になっています

最後に

自作キーボードそのものの話ではなくなりましたが、ご活用いただければ幸いです。 たぶん年明けに在庫復活予定です。

明日はhtomineさんの「初心者と自キをつくるときの注意」です。

この記事は秋葉原で580円で買ってきたhpのUSメンブレンキーボードで書きました(早く自分で作ったキーボードで書きたい…)。