「技適未取得機器を用いた実験等」の届出をしてみた

144Lab/スイッチサイエンスの菊地です。

昨日11月20日より改正電波法の一部が施行され、総務省電波利用ホームページ内に「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度のページが開設されました。

これは「技適」相当の技術基準を満たす無線機器については、実験・試験・調査等の目的を届け出ることにより「技適マーク」がなくても180日以内の間使用できるというものです。

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総務省電波利用ホームページ

対象となる無線機器

対象となる無線機器はWi-Fi (IEEE802.11a/b/g/n/ac/ad/ax draft), Bluetooth (2.1〜5.1), LoRaWAN (AS923), Sigfox(RC3), IEEE802.15.4(ZigBeeなど)等の各規格に準拠したものです。なお、Wi-Fi機器は5.2GHz帯・5.3GHz帯は屋内のみ、5.8GHz帯は使用不可など、機器の仕様が総務省令に合致しているかの確認が必要になります。

無線機器のパッケージやデバイス上にFCC IDやCEマークがあるか、また、取扱説明書や仕様書から総務省の指定する無線規格に合致しているか、を実験を行うものが確認して、自ら届出する必要があるというわけです。

技適未取得機器を用いた実験等の特例制度 関係法令

また、実験等は180日以内の短期間の実験・試験・調査である必要があり、同一目的の実験等で再度届け出ることは出来ません。技適マークを取得し無線機器に表示するか、無線局を廃止する必要があります)

端末の仕様を確認する

では、実際に総務省電波利用ホームページから届出をしてみましょう。 今回は米国出張時に入手した ParticleWi-Fi/Bluetooth開発ボード Argonと、Bluetooth開発ボード Xenonを組み合わせた検証について届出をしたいと思います。*1

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Particle ArgonとXenon

まず、Argon/XenonのパッケージやホームページのデータシートからFCCマークが確認できます。また、ParticleホームページにあるFCC IDの情報(FCC ID: 2AEMI-ARGN, 2AEMI-XENN)からFCC認証のときの詳細情報が確認できます。 日本の基準にも合致していそうです。Bluetooth規格はBluetooth 5で、心配だったWi-Fiは5GHz帯は使っていないようです。*2

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出典:Particleホームページ

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FCC IDの情報

届出の手順

総務省ホームページに届出用のメールアドレスを入力し、メールが届くのを待ちます。届いたメールから届出書作成ページに遷移し、まずは届出者の情報を入力します。

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次に、実験等の目的と先ほど調べた無線機器の規格を記載します。

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その後、運用開始の予定期日、無線局ごとの情報(シリアルナンバーや機器の形式、設置場所など)を記載して届出書印刷ページを表示し、プリンターで印刷します。

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完成した申請書

いざ、関東総合通信局

今年度内にはオンライン届出システムが整備される予定ですが、当初は届出者の都道府県を管轄する総合通信局の電波利用企画課に届出書を郵送、または直接持ち込む必要があります。

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3分ほどで無事届出が受理されましたが、その場では届出番号は出されず、後日メールアドレス宛に連絡が来るとのことです。

11/23 追記

翌朝11/22の始業前に受け付けた旨のメールが届きました。 廃止期限は届出から180日後の2020年5月18日です。 f:id:kiku_144:20191124011536j:plain

おわりに

届出手続き自体はさほど難しくはありませんが、実験対象となる機器が「技適」相当の技術基準を満たすことを確認するハードルが一般の人々には高いのではないかと感じました。

例えば、中国・深圳で購入したスマート家電等の場合には必ずしもWi−FiやBluetoothのマーキングがされているとは限りません。この場合、無線従事者免許を持つ者(無線従事者)が、当該技術基準及び電波法の技術基準に適合する旨を確認し、その旨を届出書に記載する必要があります。

144Labグループ各社では、Wi-FiBluetooth、LoRaWAN、Zigbeeの各種機器や開発ボードのお取り扱いがございますが、日本の法規制に適合した(技適マーク付きの)製品をお客さまに販売していく原則に変わりはございません

なお、本特例制度の利用を検討されるお客さまにつきましては、お取り寄せも承っております。実験検討段階でお取り寄せ希望の無線機器が本特例制度の対象となるかについて調査いただいたうえで、弊社営業までご相談いただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。

*1:なお、今回の電波法改正以前より、海外から持ち込まれたWi-Fi/Bluetooth端末等は訪日観光客等の入国の日から90日以内に限って利用可能です。 https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/inbound/index.htm

*2:Particleの過去の製品では、Wi-Fiの出力の関係で日本専用ファームウェアを焼き込まないと日本では使用できないという事例がありました。https://docs.particle.io/datasheets/certifications/certification/#telec